レビュー:『おしおき物語』

週末は風邪引いて熱出してしまい、することもなくヒマヒマだったので、初めて「おしおき物語」を通してじっくり読みました。

これ、手に入れたのはずいぶん前のことなんですけどね。
あの表紙グラビアの萌え度とDVD付きというのに惹かれて、人生で初めて手にしたエロ本がこれでした(笑)

あんなにわくわくしながら買ったのに、なぜか今まで通し読みってしてなかったんですよね。
最初から読もうとすると、いつのまにか飽きて、流し読みで済ませてた。
ゾクゾクっと来るようなシーンだけ、拾い読みしてたような感じかしら。


今回、あのお話を最初から最後までじーっくりと読んでみて、高校生の頃にアン・ライスの「スリーピングビューティ」を読んだ時の感覚を思い出しました。

私はやっぱり、本質的に大嫌いみたいなのです。
調教、しつけ、隷属。それに類する概念が。

スパンキングのシーンにはそりゃもうゾクゾクどきどきするんだけど、バックグラウンドにあるものが「調教」的なイメージになると、どうにも嫌悪感を拭いきれない。

「スリーピングビューティ」を読んだ時、あの徹底的なまでのぶっ飛びっぷり(!)と、その中からマゾヒズムの本質に迫るような作風には一種の感嘆すら覚えたものですが、当時はやはり嫌悪感も今よりずっとずっと強かったな。

眠り姫のスパンキングには、最初でこそ憧れというか、自分を投影したりもしてドキドキしたものですが、調教によってどこまでも主体性を奪われていく(捨てていく)あのストーリー展開には、苦笑しながら読んでいた覚えがあります。

もちろん、まだネットにも触れておらずスパンキングという世界も知らなかったあの頃、あそこまでスパ描写てんこ盛りの小説はもうそれだけでご馳走でしたし、SMファンタジーフィクションとしては本当にどこまでもぶっ飛んでいたので、そういう意味でもかなり楽しめたのは間違いないのですけどねw



で、今回読んだ、おしおき物語の平先生の小説。
もちろんフィクションだとは思いつつ、逃げ場を絶たれた女の子、完全なる弱きものが絶対的な暴力から逃げようもない状況で変容させられていく、という構成に、読みながらついつい顔をしかめていた私。

SMファンタジーとしてしっかり針を振り切ったぶっ飛び方をしている「スリーピングビューティ」と違って、なまじディシプリンの大義名分をかぶっていたり、親が子供の幸せを考えている描写があったりする構成がまたどうにも・・・ね。

アメ公のお嫁さん補給基地学校という設定もちょっとアレだったし、その要望に答えるべくして行われる種々の「教育」に泣きながらも普通に順応していってしまう女の子たちが、ホントにどうにも気味悪かった。

言葉でしっかりと立派な理屈を振りかざし、理性ある教育、しつけの仮面をかぶりながら、アメ公のお嫁さんという「お人形」に仕立て上げていく、完璧なまでに整ったシステム。

なんかね、直感的に思い出すのよね、幼少時のいろいろを・・・(苦笑)


あ、もちろん種々の細切れシーンは文句なく最高に興奮させられます。
とにかく描写も設定も心情描写も細かいのに過不足なく、テンポがよいので、スパンキングシーンはそりゃもうありありと想像して投影して楽しめますし。

大人の男性をハァハァさせてナンボのものですから、最重要目的はそこだってことは分かりきってる商業作品。
ひとつの長編小説としてそれ以上のものを求める作品ではないと思うし、「小説」というよりは「スパンキングスケッチ」って感じの文章だと思えば、緻密すぎるほどの設定と、主人公の志乃ちゃんのキャラがそこそこ立っていて全編通して生きていたあたり、やっぱり完成度は高いなぁと思いました。


あ、それから付属のDVD。

こーれーは・・・最後のママ/娘のお仕置きシーンだけで、「この本買った価値あった!」と思いましたw
それ以外は、スパンキングがどう見ても全っ然痛そうじゃないのと、わざとらしー感ありありで、「ふーん、やっぱりこんなもんか」でしたけど。

ママのお仕置きは良かったです、ホントに。
実写映像でここまで萌えたスパンキングシーンが今までにあったろうか!(しかも日本モノ)

正直ね、実写にスパの中でのカーとキーの感情交流的な部分の描写はひとつも期待したことが無かったのですよ。
感情交流のあるスパを期待するなら、最初からそういう作風の方の小説を読め、もしくは自分で書け(笑)これ鉄則でした。

だって映像だったらどうしてもスパンキングシーンそのものが重要でしょ。
もちろん、見る方だってそこを期待して見るんだし。
で、収録時間とかを考えると、前後の状況とか心情描写みたいなのってどうしても相対的に短くならざるを得ないのは必然だし、切り取られた短い映像で、そこに生きている役の背景とか感情までにじみ出させるのは、これ演じる人の実力にかかってくる。

でもね、この映像は、カー役の人もキー役の人も、本っ当に上手かった。
台本の中のすべての言動を、そこに生きている同じ人間(役)が感情の途切れなく矛盾なく行い、言葉を発しきるという、演技の基本でありながら一番難しいことが、お二人とも完璧だったのには本当に感嘆しました。

娘が母親の優しい問いかけにだんだん追い詰められていく様子がしっかりと描かれていたのも良かったし、ひとつひとつの台詞が矛盾なくつながるバックグラウンド設定も無理がなかったし。
あれ、背景にキリスト教設定をダイレクトに持ってきたのは大正解だと思うんですよね。
「ママに嘘をつくのは神さまにも嘘をつくことなのよ!」みたいな台詞があるんですけど、あの言葉ひとつでどれだけこの映像のリアリティが増したことか。

いや、ホントにこのワンシーンのみで、ホクホク大満足です♪


2007/07/17